一般財団法人ハプティクス技術協会
力触覚を定量把握するリアルハプティクス技術の普及促進へ
~産業界への技術普及と技術標準化を担う~
豆腐のような壊れやすい物体を掴むとき、人は手に伝わる感覚から力加減をほとんど無意識に微妙に調整しています。この感覚自体は人の中に、しかも言語化することのできない形で存在していますので定量的に扱うのは困難とされてきました。しかし、リアルハプティクス技術が実用段階を迎えつつあり、対象物との接触によって生じる刺激を物理量としてディジタル計測して伝送することが可能となり、人が行うさまざまな手作業を自動化できるようになってきました。
【ハプティクス技術協会発足の経緯】
皮膚感覚をフィードバックすること意味するハプティクス技術は、20世紀半ばから主に遠隔操作の性能改善を目的として研究開発されてきましたが、実用化にはまだまだ遠いのが実情でした。
2002年 | 慶應義塾大学で世界に先駆けて鮮明な力触覚伝送に成功したのを機に、実社会で生かす研究開発を本格化。 |
2014年 | 慶應義塾大学がハプティクス研究センターを設立。同技術はアカデミック分野からビジネス分野へと展開を開始。 |
2016年 | 慶應義塾発ベンチャーのモーションリブ株式会社を設立。 対象物に合わせて最適な力加減 (位置・速度・力) を生み出せる力触覚ICチップ「ABC-CORE」をベースに事業をスタート。 リアルハプティクス技術を用いて様々なビジネスソリューションを展開中。 |
2021年 | 一般財団法人ハプティクス技術協会を設立。リアルハプティクス技術が実用段階となってきた今、普及と標準化を加速するための、企業や大学だけではできない役割を担う新たな組織。 |
現在、リアルハプティクス技術のキーデバイスとなる「ABC-CORE」は、慶應義塾大学ハプティクス研究センターとの共同研究開発を条件に国内約80社に供給され、医療や食品、建設現場など幅広い分野で利活用されつつあります。ただ、実用に向けた研究開発を一段と加速するには、力触覚を定義する単位や技術標準を定めることが必要です。今後の普及に向けて研究開発を促進するためにも、協会がこれらの標準化の取り組みを主導し、企業と研究をつなげる役割を果たしていく所存です。
2050年には、日本の労働人口は2000万人不足するとされており、モノづくりをはじめとする若者の現場離れも深刻です。これを補うものとして期待されるのが、自動化機器としての作業ロボットですが、今の多くのロボットにはモノに触ったという感覚、つまり力触覚が欠落しているため、人に依存してきた作業領域に踏み込むことが非常に困難です。リアルハプティクス技術を応用すれば、細やかな手作業などに依存してきた人依存の作業をロボットに置き換えることが可能となります。産業分野だけでなく、農林水産分野、建設土木分野、医療・介護分野、災害救援・復旧分野など多様な業界でリアルハプティクス技術応用機器の社会実装の準備が進むと、今後わが国の産業社会に大きなインパクトをもたらすものと期待できます。残念ながら開発途上の具体的な事例を公開することはできませんが、『こんなこともできるんだ』という開発案件が数多く生まれています。
ハプティクス技術の普及促進という役割に加えて、協会が担うべき重要な役割はリアルハプティクス技術の利活用が社会の安寧と人類の平和に悪影響を与えないことと、リアルハプティクス技術の標準化の妨げとなる事象の発生を極力抑えることです。この役割を担うため、皆様方にご協力を頂くことがあるかと思いますが、よろしくお願い致します。
人口減少という避けて通れない課題に直面している日本が、将来にわたって豊かな社会を築くためにも、企業、大学と協会の連携によるハプティクス技術の普及促進に取り組んでまいります。
一般財団法人 ハプティクス技術協会
代表理事 大西 公平